Mz6.ステアしないマティーニ*****************

今し方も、その内の一冊をテーブルの上に開帳し、
シェリー酒を少しづつチビリチビリとやっていた。
アゴの男の視線は私の指先の
カクテルグラスを射抜いていた。
「どうです、一杯やりませんか?」
「いや、ありがとう。」男は飲むとも飲まないとも
答えずに会釈だけ返して、
「しかし実際、退屈しますな。この調子じゃ
退屈のあまり死んでしまうに違いない。」
私は同意した。
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