2004-11-22から1日間の記事一覧
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クライマックスがいい。 まるで剣豪同士の決闘シーンのような緊張感。 熊笹が騒めく。 熊の術中にハマッた銀九郎。 そしてリドルストーリー。 味わい深いエンディング。 吉村昭は手堅い。 .
今秋は各地でクマの被害が多かったが、 あれは冬眠中のエネルギーを蓄えるためで、 その長い期間の全エネルギーを蓄えるためには 莫大な栄養量を必要とするわけだ。 もはや彼らは冬眠に入ったため、 もうニュースを騒がせることもない。 .
そして冬になり、 長期戦に突入する。 .
餌を与えた光子を襲い、 檻ごと壊して逃亡した「権作」との攻防。 街からスペシャリスト集団もやってくるが、 仕留められずに引き上げていってしまう。 .
さて、『羆』の光子は、 安易な象徴の運命を引き受けて、 悲劇の犠牲になってしまう。 それも銀九郎が情けをかけた、 子グマから育てた「権作」によって。 .
流通のコンビニエンスが企画の画一化を図ったため、 野菜も個性を失ったが、 曲がったり、 傷ついたり、 虫喰ったものは旨いのだ。 老荘思想でも 曲がった樹は長生きするが、 まっすぐ伸びた樹など 木材にされてしまって 長生きできないという。 .
更には、楳図カズオくらいでしか見られなくなったが、 蛇の化身のようなウロコ肌の症状も 民俗学を研究していればよく行き当たる。 諏訪など。 〈とはいえ中国古代にはいくらも蛇身の王が出てくる。〉 .
また、世阿弥や金春禅竹の半世紀後の能の世界には 「鼻金剛」というニックネームの、 エミネムがパロったマイケル・ジャクソンのように、 鼻に障害のある傑物がいた。 正式名は「金剛兵衛尉氏正」。 1507〜1576。 .
奈良の生駒山の南方で、 小学生少女の惨殺される、 ひどく残虐な事件があった。 『たったひとつのたからもの』や『1リットルの涙』、 あるいは『彩香へ』などのヌースが もっと社会に浸透する必要がある。 .
ダウン症といえば今秋我々の涙腺を枯らした、 松田聖子主演のドラマ『たったひとつのたからもの』の 主人公;6歳2ヶ月で早世した加藤「秋雪」クンの症状だ。 .
美容整形技術が発達してきたために、 現代でそういう「異質性」を見ることは激減したが、 つい数十年前までは「異形」の者も多かった。 能の世界でも「奈良豆比古神社」の「春日王」が ハンセン病でそうだったし〈『精霊の王』p188必見!〉、 この話を現…
42歳にして、 首すじから胸もとまで朱を流したような 大きな痣〔あざ〕のある光子という、 肌が白いためにより一層その痣の目立つ 女性と結婚した銀九郎。 .
どうやらアイヌの子でもある 銀九郎は、本州の和人よりも 一倍勘が鋭く、 ために別格あつかいされている。 .
吉村昭の『羆』〔ひぐま〕でも、 主人公;銀九郎はだから注意深く、 それに対して無神経な猟犬を嫌う、 非常に優れたマタギだ。 .
そこで紹介されるように、 デート相手の白人女性が、 下着を二日も三日も着けたままにして 自分の匂いを強調したりしたら ちょっと引いてしまうだろうけれども。 .
ただ、ライアル・ワトソンの『匂いの記憶』を見てると、 確かに我々日本人は匂いに過敏であり、 デオドランドしすぎで、 ために人格さえ失せている。 .
『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター、 『キャットピープル』のナスターシャ・キンスキーなどにも、 そういうことを想わすシーンがある。 .
クマは嗅覚が鋭い。 よく、海中に一滴の血を垂らせば、 何km先のサメがそれを嗅ぎ付け、 寄って来るというが、 陸上版のそれがクマである。 .
■●■●■●■■●■●■●■■●■●■●■ . 『吾輩はクマである』 ――戦後文学の金字塔ついに成る!―― ■●■●■●■■●■●■●■■●■●■●■ . .