▲▼∴ 702763. ∵▲▼ ニューアカの秋
もう20年から前の話である。
名古屋の栄で彼に会った時、
少し中沢新一のことに触れた。
すると彼は上目遣いに「最近、もう永らく
中沢君には会っていないんだよね」
と寂しそうに漏らした。
その2ヵ月後に中沢新一に会ったら、
「人間関係には抗い難い大きな節目があって、
去っていく者があれば新しく来る者もある。
いま僕はその過渡期だ」
というようなことを云ってゐた。
〈何て冷たい、恩知らずな奴だ!〉
と私は憤った。
ちょっと物申してやろうと思ったら、
奴は出始めの携帯電話を取り出し、
生徒との不倫電話に勤しみ始めた。
私が中沢を身分けした瞬間である。
- 作者: 山口昌男
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