■■=== 6 ===■■「垂らし込み」の「幹」

そして梅の木の部分の写実性も、
「墨」で描かれたのではなく、
錆びた銅;緑青〔ロクショウ〕を焼いて灰色や黒に変色させ、
たっぷりの水でこれを溶き、その乾いていく過程で、
ムラが増幅される偶然性でリアリティを生むのだ。
しかもこの「垂らし込み」という技法は、
金箔の上に描けば水分の吸収が悪く、
乾く前に絵具が混じり合い、
ムラやニジミが出来にくい。
これも金泥の上にであればこそ出る、
得もいわれぬ妙味なのだ。
〈これも東京芸術大学の宮廻正明が比較実験を試みた。〉
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